夢の中

仕事に疲れてくたびれた顔をした男が見える


風呂にも入らず、明日の激務に備えて帰宅するやいなや床についた


こんな大人にはなりたくなかったのに・・・・


いつもの一日を終え、男はコンビニの袋を力無くぶら下げて帰ってきた


入っているのはカップめんとアイドル雑誌


最近のアイドル事情にはすっかり疎くなってしまった


雑誌をパラパラめくるとふと目にとまった記事


地方のラジオ番組に新しいパーソナリティの女の子が入るらしい


記事の横に小さく添えられた写真に釘付けになる


名前を変えているが、忘れることなんてできないぷにぷにほっぺと優しいほほえみ


間違いない!あの子だ!


男の目にはぶわっと涙が溢れる


「戻ってきてほしくない」なんて言ったりもした


「戻ってくることは不幸だ」なんて言ったりもした


しかし、この込み上げてくる感情はなんだ?


男は心の底から叫んだ


おかえり!












夢から醒めるとぼくは涙を流していた


戻ってくるなんて幻だ


今流れている時間は5年間の思い出を噛み締めるためのもの


時間はたっぷりある


今日も明日もあさっても一年後も十年後も


あの子を思い出す時間だ


あの子の幸せを願う時間だ


自分が幸せになるための時間だ


時間はたっぷりある


ぼくらは世界一幸せな時間を過ごしている


でも・・・・・












やっぱりあの子に帰ってきてほしい


夢の中の男がうらやましい